ご依頼の経緯
S様は、万が一ご自身が亡くなった際に、奥様の認知症が進行していた場合、遺産分割協議ができなくなる可能性があることを知り、不安を感じていました。
通常、相続が発生すると、法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。しかし、相続人の中に認知症などで判断能力を欠く方がいる場合、その方の代理人として成年後見人を立てなければならず、手続きが煩雑化します。S様の奥様はすでに軽度の認知症を患っており、今後症状が進行する可能性があったため、早めの対策が必要でした。
そこで、S様は「相続手続きが滞りなく進むようにしたい」と考え、公正証書遺言の作成を決意。当事務所にご相談くださいました。
担当者のコメント
S様のケースでは、家族仲が良好であり、遺産の分割方法で争いが生じる心配はありませんでした。しかし、奥様の認知症の進行によって、将来的に相続手続きが困難になる可能性が高いことが懸念されました。そのため、今回の遺言書作成では「できる限り相続手続きを簡素化し、スムーズに進めること」を重視しました。
具体的には、以下の対策を講じました。
1. 戸籍の完全収集
通常、公正証書遺言の作成時には、遺言者と相続人の関係性を証明する戸籍謄本を取得すれば十分ですが、今回は将来の相続手続きの負担を減らすために、S様の出生から現在までの戸籍をすべて収集しました。また、相続人となる方々の戸籍も取得し、将来的な手続きがスムーズに進むよう準備しました。
2. 財産状況の明確化(残高証明書の取得)
公正証書遺言の作成には、財産目録を作成する必要はありませんが、遺言書作成時点での財産状況を明確にするため、各金融機関から残高証明書を取得しました。これにより、遺言書に記載されていない具体的な金額まで把握することができ、後の手続きでの混乱を防ぐことができました。
3. 遺言内容のシンプル化と共有
遺言の内容が複雑になると、相続人が解釈を誤る可能性があるため、できる限りシンプルで分かりやすい内容にするよう工夫しました。また、S様のご意向により、遺言書の写しを相続人にも共有し、あらかじめ内容を理解してもらうことで、後のトラブルを未然に防ぐことができました。
その結果
S様の公正証書遺言は、無事に作成・完成しました。遺言書の内容は分かりやすく整理されており、相続人の皆様にも事前に共有することで、相続発生後の混乱を防ぐことができました。また、戸籍や財産状況の記録がしっかりと整えられているため、将来的に相続手続きを円滑に進めることができる環境を整えることができました。
お客様メッセージ
「公正証書遺言を作成するだけでなく、将来の相続のことまで見越して丁寧に準備していただき、とても安心しました。自分が亡くなった後、家族がスムーズに手続きを進められるようにできたことが嬉しいです。相続人にも遺言書の内容を共有できたことで、不安が解消されました。」
この事例のように、相続人に認知症の方がいる場合でも、公正証書遺言を作成し、事前に準備を整えることで、将来の相続手続きをスムーズに進めることができます。遺言書の作成をお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。