2025年1月30日、経済産業省は「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の詳細を発表しました。この補助金は、人手不足に悩む中小企業がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術を活用した設備を導入し、生産性向上や賃上げを実現することを目的としています。これまであった通称カタログ型との違い等、本記事では、その概要や申請要件、補助内容などについて詳しく解説します。
中小企業省力化投資補助金(一般型)とは
日本の中小企業は、少子高齢化や労働力人口の減少に伴い、人手不足という深刻な課題に直面しています。また、政府は2020年代中に全国の最低賃金の平均値を1,500円以上にする事を目指しており持続的な賃上げをすすめており、持続的な賃上げの為にも生産性向上は必要不可欠となっています。
「中小企業省力化投資補助金(一般型)」とは、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等
の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した専用設備を導入するための事業費等の経費の一部に対して補助される補助金です。デジタル技術等を活用した専用設備とは、ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)のことをいいます。
これらいわゆるオーダーメイドの専用設備によって中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とした補助金です。
最大で1億円が補助されるなどかなり大きな規模の補助金となっています。

※詳しくは中小企業省力化投資補助事業(一般型)のページをチェック
中小企業省力化投資補助金(カタログ型)との違い
同じく省力化投資を支援する制度として2024年からすでに存在していた通称「カタログ型」があります。今回新たに公表された一般型とは以下の点で異なります。申請を検討する場合はどちらが自社にとってより適しているか検討することが大切です。
- 支援対象の範囲:カタログ型は、事前に登録された省力化製品(汎用品)の導入を支援するのに対し、一般型は企業ごとの各現場や事業内容に合わせたオーダーメイドのデジタル設備の導入やシステム構築などとなっており、より多様な省力化設備が対象となっています。
- 補助上限額と補助率:一般型の方が補助上限額が高く設定されています。カタログ型は最大1,500万円の補助のところ、一般型は最大で1億円の補助が受けられます。
補助率も、カタログ型は1/2のところ、一般型は企業の規模や条件に応じて変動するものの、1/2から2/3まで適用されます。 - 申請の難易度:カタログ型はすでに国が省力化効果を認めた商品を選択して申請します。商品の販売事業者との共同申請であり、申請時に必要な省力化効果判定シートも販売事業者が基本丁に作成するものとなっており申請は申請が迅速かつ簡易です。それに比べて一般型は申請する製品を用いてどのような省力化効果が見込めるのか、省力化効果により付加価値の向上がどの程度見込めるのか、事業状況に見合った投資であるのか、革新性がどれだけあるのか等を総合的に記載した事業計画書が必要になります。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請要件
補助金の申請には、以下の基本要件を満たす必要があります。
- 労働生産性の向上:事業計画期間内に、労働生産性を年平均で4.0%以上増加させる。
- 給与支給総額の増加:1人あたりの給与支給総額を年平均で、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させること。
- 事業所内最低賃金の引上げ:事業所内の最低賃金を、毎年事業実施都道府県の最低賃金より30円以上高い水準に設定すること。
- 一般事業主行動計画の公表:従業員数が21名以上の場合、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表する。
これら4つの要件をすべて満たした事業計画を策定することで申請できるようになります。ただし、交付決定され事業実施後も②及び③については未達だった場合補助金の返還などが発生してしまいますので注意すべき点となります。
補助上限額と補助率
一般型の補助上限額と補助率は、企業の従業員数や賃上げの状況に応じて以下のように設定されています。
補助上限額
従業員数 | 補助上限額 | 大幅な賃上げを行う場合の 補助上限額 |
5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
6人~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
21人~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
51人~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
大幅な賃上げとは、
① 給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加
② 事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準
を達成する計画の場合に選択できる上限額となっています。
補助率
中小企業…1,500万円までは1/2、1,500万円以上は1/3。ただし指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いる場合は1,500万円までの補助率は2/3となります。
小規模事業者・再生事業者…1,500万円まで2/3、1,500万円以上は1/2
対象経費
中小企業省力化投資補助金(一般型)で補助対象となるのは、省力化・自動化を目的とした設備やシステムの導入にかかる費用です。またそれらに伴う技術導入費や専門家経費も認められます。他の補助金のように、事業所内の工事や広告宣伝費は補助対象ではないのでご注意ください。以下に、具体的な対象経費を詳しく解説します。
1. 機械装置・システム構築費
① 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③ ①若しくは②と一体で行う、改良又は据付けに要する経費
📌 注意点
- 汎用性が高い及び簡易的なカスタマイズで使用可能な製品は対象外となっています。
- 必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要
- 既存の機械設備の単なる更新・修繕は補助対象外。
- 機械装置等の設置場所(工場や店舗等)を有していることが必須です。
2. 技術導入費
①本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費
📌 注意点
- 補助対象経費総額(税抜き)の3分の1が上限となります。
3.専門家経費
①本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費
📌 注意点
- 補助対象経費総額(税抜き)の2分の1が上限となります。
- 1日5万円(大学教授・弁護士等)が上限となります。
4.運搬費
①運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
📌 注意点
- 購入時の機械装置の運搬料については、機械装置費になります。
5. クラウドサービス利用費
①クラウドサービスの利用に関する経費
📌 注意点
- 自社の他事業と共有する場合は補助対象になります。
- サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費等は対象外です。
- パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象外です。
6. 外注費
専用設備の設計等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
📌 注意点
- 補助対象経費総額(税抜き)の2分の1が上限となります。
- 機械装置等の製作を外注する場合は「機械装置・システム構築費」になります。
7.知的財産権等関連経費
生産・業務プロセスの改善等に当たって必要となる特許権の知的財産権等の取得に
要する弁理士の手続代行費用、知的財産権等取得等に関連する経費
📌 注意点
- 補助対象経費総額(税抜き)の3分の1が上限となります。
- 日本の特許庁に納付する手数料等(出願料、審査請求料、特許料等)は対象外です。
- 拒絶査定に対する審判請求又は訴訟を行う場合に要する経費は対象外です。
活用イメージ
①通信販売事業でオンラインショッピングの顧客数及び購買量に対応するため、自動梱包機及
び倉庫管理システムをオーダーメイドで開発・導入
②自動車関連部品製造事業で検査が難しい微細な自動車関連部品の製造を効率的に行うため、最新のデジタルカメラやAI技術等を活用した自動外観検査装置を事業者の現場に合わせた形で導入
今後のスケジュール
1月30日に発表された内容によると今後のスケジュールは
①3月上旬申請様式公開
②3月中旬申請受付開始
③3月下旬申請締切予定
と予定されています。審査を仮に2.5か月とすると6月中旬頃交付候補者の決定。その後すぐ交付申請を提出したとして、交付決定は9~10月頃と予想できます。事業実施期間は交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内)の為、最長で2027年2月頃まで補助事業期間として確保できることになります。
※上記①~③以外のスケジュールはあくまで当事務所の予想です。

まとめ
「中小企業省力化投資補助金(一般型)」では、カタログ型よりも補助上限額や補助率がアップしており、省力化や自動化を実現するための設備・システム導入費用が幅広く補助対象となります。ただし、申請の難易度は上がっており、計画未達の場合は補助金の返還等も発生します。
申請の際には、公募要領を正しく理解し、申請することが必要です。
ご不安な方は補助金に関して実績豊富な当事務所にご相談くださいませ。どんな小さな悩みでも親切丁寧にお答えいたします。