ものづくり補助金とは。簡単にわかりやすく解説します。

設備投資系の補助金として人気の高い「ものづくり補助金」

補助額も大きく、何百万、何千万もかかるような機械装置やシステムでも自己負担を抑えて導入でき生産性の拡大に直結する為非常に使い勝手のよい補助金です。

ただその名前のせいか、製造業以外は申請することができないと思い込んでいたり、「革新的」の要件がわかりずらいなどの問題点があるのも事実です。

本記事は人気の「ものづくり補助金」をなるべく簡単にわかりやすく解説したいと思います。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金は正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援を目的としています。

この正式名称が表すように「製造業」だけでなく「小売業」や「サービス業」など製造業以外の業種でも「これまでやってこなかった革新的な新商品・新サービスをスタートさせたい」という取組みをされる場合はものづくり補助金に申請し採択される可能性はあります。

どのような取組みが対象になるのか?

ものづくり補助金の申請の為には、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善が必要です。

「革新的」とは同業の中小企業で既に相当程度普及している技術・方式等ではない事を求められます。その為、自社でははじめて行う取組みだが、他社では一般的にすでに普及している取組みや、地域でもすでに多くの事業が取り組んでいるものは対象外となります。

必ずしも日本初である必要はありませんが、

①業界では最先端の取組みで多くの他社がまだ取り組んではいない
②業界では割と取組んでいる企業は増えてきたがまだ大企業が中心で、地域で行っている他社はいない

というくらいのレベル感は必要であり、その点を事業計画書内で証明する必要があります。

またそれ以外にもいくつか要件があります。

・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
・事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする
・事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
・補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること

ものづくり補助金の申請枠

ものづくり補助金には全部で5つの申請枠があります。「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」です。

そのそれぞれで要件や補助額が変わります。

通常枠

通常枠は基本要件である、革新的な新製品・新サービスや提供プロセスへの取組み以外に要件のない最も基本的な枠です。

補助額は従業員の数によって変動し、従業員数が5人以下の場合最大750万円。従業員が21人以上の場合1250万円となります。

補助率は通常は1/2ですが、小規模企業者・小規模事業者、再生事業者の場合は2/3となります。

回復型賃上げ・雇用拡大枠

回復型賃上げ・雇用拡大枠は雇用している従業員を増加したり、賃上げしたりして従業員の処遇改善に積極的な事業者を支援する枠です。

基本的な申請要件に加えて
(1)前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であること
(2)常時使用する従業員がいること
(3)補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額の増加率が1.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準の増加目標を達成すること
という要件が追加されています。

補助金額は通常枠と変わりませんが、補助率は全ての事業者が2/3となっています。

デジタル枠

デジタル枠はDXに関する取組みを行う事業者を支援する専用の枠です。
基本的な要件に加え、さらに3つの要件が追加されています。

⑴「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」または「デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善に取り組むこと
⑵DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。
⑶)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を応募申請時点で行っていること。

このうち⑵と⑶についてはさほど難易度が高いものではありませんので、申請自体はそこまで難しくないといえるでしょう。

補助上限額は通常枠と同じ。補助率は全業種一律で2/3となっています。

グリーン枠

グリーン枠はその名のとおり、温室効果ガスの削減に資する取組みに対しての枠になります。

要件としては温室効果ガスの削減に資する取組みを基本に、「3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること」という要件が追加されます。
炭素生産性を求めるにはその会社のCO2排出量を求める必要があり、それ以外にもグリーン枠はエントリー、スタンダード、アドバンスと別れておりそのそれぞれに個別の要件が必要となる為、申請難易度は高めの枠といえます。

補助上限額はエントリーは通常枠と同じですが、アドバンスになると従業員5人以下でも2000万円。従業員21人以上となると4000万円と高額になります。補助率は全業種一律で2/3です。

グローバル市場開拓枠

グローバル市場開拓枠は海外市場の拡大・強化を目的とした枠となります。

要件としてはさらに4つの細かい枠に分かれておりそのそれぞれの要件を満たす必要があります。
補助事業減額は最大3000万円。補助率は通常1/2。小規模企業者・小規模事業者 2/3となっています。

大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例とは

各申請枠において大幅な賃上げに取り組む事業者には補助上限額が増加します。

従業員数が5人以下の場合は上限が+100万円。
従業員数が6人~20人の場合は上限が+250万円
従業員数が21人以上の場合は上限が+1000万円

特に従業員が21人以上となる事業者については上限が非常に増えており有利といえます。

ただしそのためには給与支給総額が年率平均6%以上となること。事業場内最低賃金を毎年45円以上上昇させることという2つの厳しい条件が必要です。

人件費は企業の収益を大きく圧迫する為しっかりと考えてから取り組む方がいいでしょう。

補助対象経費は

ものづくり補助金も他の補助金と同様に取組みに関する全ての経費を補助金の対象とする事はできません。補助対象経費とできる経費は公募要領にて定められています。

機械装置・ システム構築費…補助事業の為に使用される、機械やソフトウェア、システム等

技術導入費…本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費

専門家経費…本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費

運搬費…運搬料、宅配・郵送料等に要する経費

クラウドサービス利用費…クラウドサービスの利用に関する経費

原材料費…試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費

外注費…加工や設計(デザイン)・検査等の 一部を外注(請負、委託等)する場合の経費

知的財産権等関連経費…特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費

どの申請枠でも経費に入れることができるのがこの8項目になります。

それ以外にグローバル市場開拓枠のみ海外旅費が。グローバル市場開拓枠のうち②海外市場開拓(JAPANブランド類型)のみ通訳・翻訳費と広告宣伝・販売促進費が認められています。

申請にあたっての注意点

補助事業の実施場所を確保しておく必要がある

申請時に補助事業を行う場所を確保しておく必要があります。賃貸であれば賃貸借契約書を結んでおくことが必要です。

場所とは、土地の事ではなく多くの場合建物の事を指しています。そのため、自らが所有している土地でも建物を建設中の場合や建設予定である場合は対象外となります。

なお、補助事業の実施場所とは、補助対象経費となる機械装置等を設置する場所や、管理を行う場所の事を指しており、登記上の本店や支店とは異なる場所の場合もあります。

機械装置等の設備投資が必須

補助金の性質上、50万円以上の機械装置等を取得する計画である必要があります。

機械装置等の取得予定がない事業計画は不採択となってしまいます。この点機械装置等が必ずしも求められていない事業再構築補助金とは異なるところです。

基本要件未達の場合の返還があり得る

ものづくり補助金では事業計画において、付加価値額、給与支給総額、事業場内最低賃金の3点を増加させる計画を示す必要があります。

そのうち、給与支給総額と事業場内最低賃金に関して実際に取組みを行った結果未達となってしまった場合については一定の計算のもと補助金の返還を求められることがあります。

なお、付加価値額については売上が想定どおり伸びないことはあり得るため、返還の要件にはなっていません。

多くの加点項目が存在する

ものづくり補助金にはとても多くの加点項目が存在します。そして加点をまったく取らなかった事業者と加点を5個以上とった事業者とではその採択率に大きな差ができています。

以下に加点項目をまとめました。計画的に申請まで進め少しでも加点を獲得するようにしましょう。

⑴経営革新計画の認定を取得していること
⑵創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)であること
⑶「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者」
⑷再生事業者
⑸デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況(デジタル枠のみ)を所定の方法で公表する
⑹令和4年度に健康経営優良法人に認定された事業者
⑺技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者
⑻J-Startup、J-Startup地域版に認定された事業者
⑼「新規輸出1万者支援プログラム」に登録した事業者(グローバル市場開拓枠のう ち、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ)
⑽取引先の事業者がグリーンに係るパートナーシップ構築宣言をしている事業者(グリーン枠のみ)
⑾有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
⑿給与支給総額と事業場内最低賃金を所定の増加率とする計画をたて、事務局に誓約書を提出している事業者
⒀被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む事業者
⒁「えるぼし認定」を受けている事業者、もしくは従業員100人以下の事業者で「女性の活躍推進企業データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者
⒂「くるみん認定」を受けている事業者、もしくは従業員100人以下の事業者で「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者


まとめ

ものづくり補助金は「設備投資」に関する補助金といえます。
革新性のある新しい取り組みに使う設備投資を補助してくれるため、既存事業を一段階上のレベルに押し上げてくれることでしょう。

申請にあたっては、取組み自体に革新性があるのか。人件費などの増額計画が無理のない事業計画となっているのか。加点項目は計画的に取れているのか。など多くのクリアすべき課題はありますがクリアできた時には約1,000万円前後の支援が受けられるので積極的に検討していきましょう。

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三島友紀
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行政書士/ファイナンシャル・プランナー

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