小規模事業者持続化補助金とは最も使い勝手がよい補助金のひとつといえます。販路開拓にかかる費用を補助してくれるため、特に資金的な余裕が少ない創業直後の事業者は積極的に使っていき、なるべく多くの顧客に自社の商品・サービスを知っていただく事で早期に経営を安定させる手助けとなる補助金といえます。どんな人が申請できるのか、補助金額はいくらなのか。補助対象経費は。くわしく簡単に解説していきます。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金とは公募要領によると「持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、その取り組みと併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するもの」とされています。
少しわかりづらいので事例でご紹介すると
「今まで提供してきた商品を、新しい顧客に届けてさらに売上アップをめざしたい」
「新しい商品をつくって、顧客により多く買っていただき売上アップをめざしたい」
「(上記取組みと併せて)店内のレイアウトを変更したり、時短に繋がる機械設備を導入して業務を効率化してコストを下げたい」
といった中小企業の販路開拓と業務効率化につながる取り組みをサポートしてくれる補助金です。
小規模事業者持続化補助金の要件
小規模事業者持続化補助金に限らず、補助金には「この要件を満たしていない人は申請できません」という要件があります。まずは申請できるかどうかこの要件を確認してみましょう。
1,小規模事業者であること
小規模事業者持続化補助金の対象者は大企業や従業員を何十人も抱えている比較的大きな企業は対象となりません。
「商業・サービス業」の事業者は従業員が5名以下。「商業・サービス業のうち宿泊業、娯楽業」の事業者。及び「製造業とその他の産業」の事業者は従業員が20名以下というのが要件になっています。
これらを超えると小規模事業者持続化補助金は申請する事ができません。
商業・サービス業とは「他社から仕入れた商品をそのまま販売する事業」や「在庫性・代替性のない価値(=個人の技能をその場で提供する等の流通性がない価値)」を提供する事業の事をいい、主に、小売業や卸売業。理容室、エステサロン、家事代行等に代表されるサービス業の事を言います。
なお、区分が異なる複数の事業を営んでいるなど判断が難しい場合は「その他」として「製造業その他」の従業員基準を用いることとなっています。
「従業員」には「会社役員」や「個人事業主本人および同居の親族従業員」「申請時点で育休など休業中のもの」「所定労働時間が同一の事業所に雇用される【通常の従業員※1】の所定労働時間に比べて短いパートタイム労働者」は含まれません。
※1 通常の従業員とは社会通念上の概念になりますので、正社員がいればその方が基準に。正社員がいない場合はフルタイムに近い働き方をしている従業員が基準になります。その基準の方よりも概ね3/4以下の労働時間のものは従業員には含めません。
2,商工会議所・商工会の支援を受けること
小規模事業者持続化補助金の申請には商工会議所や商工会の担当者に作成した事業計画書を見てもらい、所定の書類をもらっておく必要があります。
商工会議所や商工会の会員ではなくても対応してくれますので、自分の会社の本店を管轄している商工会議所や商工会。個人事業主の場合は事業所や事業主の住所地を管轄している商工会議所や商工会に連絡してみましょう。
3,対象外の業種、法人格ではないこと
小規模事業者持続化補助金の申請は株式会社や合同会社などの営利法人、個人事業主、一定の要件を満たす特定非営利活動法人が補助対象者となります。
一般社団法人、公益社団法人、一般財団法人、公益財団法人、医療法人、宗教法人、学校法人、農事組合法人、社会福祉法人、法人格のない任意団体などは補助対象者とはなりません。
また個人事業主でも、「医師」「歯科医師」「助産師」などの医療に係る方や
系統出荷による収入のみである個人農業者、林業、水産業者
などは補助対象外の事業者となっています。
もらえる補助金の金額とは
小規模事業者持続化補助金には2023年5月現在5つの枠が存在いたします。1番基本となる「通常枠」の場合は補助上限額は50万円となっております。補助率は2/3なので、75万円の経費を使った場合50万円が補助金となるという事です。
通常枠以外の4つの特別枠
⑴賃金引上げ枠…従業員の賃金の引き上げに意欲的な事業者の方の枠です。
補助上限額は200万円。補助率は2/3(赤字事業者の場合3/4)となっています。
⑵卒業枠…常時雇用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員数を超え事業規模を拡大する事業者の方の枠です。
補助上限額は200万円。補助率は2/3となっています。
⑶後継者支援枠…将来的に事業承継を行う予定があり、「アトツギ甲子園」のファイナリスト等になった事業者の方の枠です。
補助上限額は200万円。補助率は2/3となっています。
⑷創業枠…創業直後の事業者を支援する為、「認定連携創業支援等事業者」が実施する「特定創業支援等事業」による支援を受けた事業者の方の枠です。
補助上限額は200万円。補助率は2/3となっています。
インボイス特例
全ての枠に対してインボイス特例という補助上限額の上乗せ要件が設定されています。
インボイス特例とは、2021年9月30日~2023年9月30日の属する課税期間で1度でも消費税の免税事業者であったもの又は免税事業者であることが見込まれる事業者が、補助事業終了時点で的確請求書発行事業者の登録を受けることで、各補助上限額を一律50万円上乗せできる制度です。
このインボイス特例に該当すれば、通常枠は上限が100万円に。賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠は上限が250万円になります。
補助対象経費は
小規模事業者持続化補助金では新たに取り組む販路開拓や、販路開拓と併せて行う業務効率化の取組に必要となる経費が補助対象となります。ただし全ての経費が補助対象となるわけではなく以下の11項目のどれかにあてはまる必要があります。
⑴機械装置等費
補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費です。例えば新商品を製造するのに必要不可欠な機械やソフトウェア。新サービスに必要な備品、生産性向上の為のオーブンや冷凍冷蔵庫などの厨房機器等があてはまります。
多くの事業者が該当する為、補助対象経費の中では多く申請されていると思われます。
なお、汎用性が高く、目的外使用になり得るものとして、PCやスマートフォン、カメラや自動車、自転車などは対象とはなりません。
⑵広報費
パンフレット、ポスター、チラシ等を作成および広報媒体等を活用する為の経費です。
販路開拓に資する取り組みとして本命ともいえる経費項目でほとんど全ての事業者が申請されていると思われます。例えばチラシ・カタログ・パンフレットなどの製作費や新聞、雑誌等への広告掲載、ポスティング費用等があてはまります。
なお、商品・サービスの宣伝広告を目的としない看板・会社案内パンフレットの作成や求人広告は対象外となります。また、チラシ等の配布物のうち未配布分・未使用分は対象となりません。
⑶ウェブサイト関連費
販路開拓を行うためのウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、開発、運用をする為に要する経費です。主にホームページの作成やウェブ広告などに用いられます。こちらの経費も多くの事業者が申請される経費といえます。
ウェブサイト関連費については注意点が2点あります。
1つは補助金交付申請額の1/4が上限となっている点。
もう1つはウェブサイト関連費のみでの申請ができないという点です。
小規模事業者持続化補助金ではウェブサイト関連費が補助事業経費の大半を占める計画は認められておりません。150万円を支払って100万円を補助金として受け取る計画の場合、100万円の1/4の25万円までしかウェブサイト関連費として受け取ることはできず、残り75万円はその他広告費や機械装置等として申請する必要があります。
⑷展示会等出展費
新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費です。関東の方であれば、東京ビックサイトや幕張メッセ、パシフィコ横浜等で展示会が開かれているのに行かれた事もあると思います。そのような展示会に出展する為の費用や会場までの運搬費が主な対象となります。
販路開拓の手段として展示会が有効と思えるような商品・サービスの場合積極的に使っていきたいですね。
⑸旅費
補助事業計画に基づく販路開拓等を行うための現地調査等の出張や展示会等の会場との往復などに関する経費です。宿泊費の場合は国が定める旅費の支給基準を踏まえた金額となるため1泊約1万円となります。
また交通費は最も経済的な通常の経路および方法により計算します。グリーン車やビジネスクラス、タクシー代やレンタカー代は対象外となります。
また国内だけでなく海外の旅費も対象となります。
⑹開発費
新商品の試作品や包装パッケージの施策開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費です。
新商品の開発には何度も試作品を製作したり、改良をする必要があります。場合によっては開発期間が何年にもわたる事もあります。補助金を使う以上開発期間は半年くらいになってしまいますが、その間の試作開発用の原材料の購入や新たな包装パッケージに係るデザイン費用などを補助対象経費に含めることができます。
使い切らなかった原材料や、その原材料を使って商品を販売することはできません。
⑺資料購入費
補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入する為に支払われる経費となります。
補助事業遂行に必要な参考図書や手引き等の購入につかえますが、所得単価は10万円未満のものに限られ、1種類につき1冊が限度となります。
⑻雑役務費
販路開拓を行うために必要な業務・事務を補助する為に臨時的に雇い入れたアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費です。
珍しく人件費が補助金として出てくる経費です。ただしあくまでも臨時的なアルバイトの為、補助事業が終わった後に通常業務に従事させることはできません。セミナーや展示会、催事出店の際のアルバイト等に使える経費といえます。
⑼賃料
補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費です。
催事出店する際にレンタル会社からレンタルする冷蔵庫、テント、のぼり等に使える経費といえます。また商品・サービスPRイベントの会場を借りるための費用もこの賃料の経費となります。
また、補助事業以外にも使用するもの、通常の生産活動のために使用するものは補助対象外です。
⑽設備処分費
販路開拓の取組を行うための作業スペースを拡大する等の目的で、事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する。または借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要となる経費です。
単なる廃棄処分ではなく、販路開拓の取組みを行う為にはこの設備の処分が必要であるというストーリーが必要となります。
また、設備処分費への補助対象経費の額は補助対象経費総額の1/2が上限となります。
⑾委託・外注費
上記の⑴~⑽に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託・外注するための経費です。事業者自らが通常業務として実施している業務については対象になりません。
建設業者が建設工事を下請けに外注するような外注費は対象になりません。
飲食店事業者が店舗の改装工事や生産性向上の為の電気・水道工事などは対象となります。
申請の方法
小規模事業者持続化補助金の申請ではまず商工会議所地区、商工会地区に分かれた専用サイトにある公募要領及び応募時提出資料・様式集をご確認ください。
その上で事業計画書等(「経営計画書」および「補助事業計画書」、希望する枠や加点等に関する書類)を地域の商工会議所・商工会の窓口に提出して、「事業支援計画書」(様式4)の交付を受けます。
その後、事業計画書等を受付締切までに補助金申請システム(Jグランツ)を利用して電子申請により提出します。
(郵送での申請も可能ですが、審査上マイナスになりますのでJグランツを利用するべきです)
注意事項
小規模事業者持続化補助金は申請を終えてから採択発表まで約2か月の時間がかかります。
採択されたのちも交付決定通知書が郵送されてくるまでに1~2週間がかかります。
交付決定通知書にかかれた交付決定日以前に契約・発注・支払・納品した経費については補助対象外となってしまうのであせって買い物をしないように時間にゆとりを持って補助事業を進めていきましょう。また支払については現金払いや分割払いはやめておき、基本的には銀行振込を利用しましょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は創業直後などに特におすすめの使い勝手のよい補助金です。広告費やホームページの制作など幅広く使えるため、自社の商品・サービスを多くの方に周知してもらうのに非常に適しています。
補助額も50万円から250万円と小規模事業者にとっては大変大きな金額が補助されます。
100万円の広告費も補助金を使えば、約33万円で済みます。67万円の補助金は売上ではなく真水として振り込まれます。利益率が10%の会社であれば67万円は670万円の売上に匹敵します。大変貴重なお金ですのでぜひご利用をいただきたいと思います。
多く使われる経費項目としては、機械装置等費、広告費、ウェブサイト関連費そして委託・外注費が多いと思われます。
自社の商品・サービスの販路拡大にはどのような取り組みがよいのか考え、使える経費項目を検討してみましょう。