2021年からスタートした事業再構築補助金。当初は新型コロナウイルスの影響により経営に大きな打撃をうけ、売上が減少した企業の新たな挑戦を後押しするために活用されていました。その後2023年6月締切の第10回公募からはまた違う側面を持った補助金へと変貌を遂げています。事業再構築補助金とは現在どんな補助金なのでしょうか。わかりやすく簡単に解説します。
事業再構築補助金の目的
公募要領(サプライチェーン強靭化枠を除く)によると、事業再構築補助金の目的とは
「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を要する中小企業の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします」
とあります。
ここで大事になるのは色がついている『経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築』の部分です。
新型コロナウイルスだけでなく、物価高や産業構造の転換、DX、GX、少子化…様々な経済社会の変化が現在起きています。
中小企業としてそれらの経済社会の変化に対応するには、事業形態を柔軟に変えていかなければなりません。第10回の事業再構築補助金からは、経済社会の変化に対応する為に自社の事業をより成長可能性の高い業種や生産性の高い事業へ変革する企業を支援しようという側面がかなり強く出ていると感じています。
事業再構築補助金の要件
事業再構築補助金の要件は主に4つあります。
⑴事業再構築指針に沿った取組みであること
経済産業省が示している「事業再構築指針」に沿った取組みでないといけません。事業再構築指針には新市場進出、事業転換、業種転換、事業再編、国内回帰の5つがあります。
新市場進出とは新たな製品やサービスをつくり、それをもって新たな市場を開拓していく取組となります。事業転換、業種転換は新市場進出をさらに推し進めたもので、新たな製品やサービスによって、主な事業が転換したものが事業転換。主な業種が転換したものが業種転換となります。(事業再構築指針の手引き)
⑵認定経営革新等支援機関の確認をうけていること
申請時には「認定経営革新等支援機関の確認書」が必須となっています。認定経営革新等支援機関とは中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う機関で、主に、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士、民間コンサル会社、商工会・商工会議所、金融機関などが認定を受けています。(認定経営革新等支援機関検索システム)
⑶補助事業終了後3~5年で付加価値額と給与支給総額の年率平均を決められたパーセンテージ以上増加させる事業計画を策定すること
補助事業を行って3~5年で付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費を足したもの)を決められたパーセンテージ上昇させる必要があります。決められたパーセンテージは申請枠によって異なりますが3.0~5.0%となっています。また、成長枠とグリーン成長枠については給与支給総額も増加させる計画を策定する必要があります。
策定した事業計画は10~15ページの事業計画書にまとめ、その事業計画書をもとに審査され、より優れた事業計画書が採択されるようになります。
⑷申請枠によって決められた要件に該当すること
事業再構築補助金では、成長枠、グリーン成長枠(エントリー・スタンダード)、産業構造転換枠、サプライチェーン強靭化枠、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠の主に6つの枠があり、そのそれぞれに上記3つの要件以外の要件が定められています。
例えば成長枠であれば、取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していることという要件が定められておりますし、
物価高騰対策・回復再生応援枠であれば、2022年1月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が2019~2021年の同3カ月間の合計売上高と比較して10%以上減少していることという要件が定められています。
事業再構築補助金の補助金額
事業再構築補助金の補助金額は補助金の中でも高額となっています。
補助金額 | 補助率 | |
成長枠 | 最大7000万円 | 1/2 |
グリーン成長枠 | 最大1.5億円 | 1/2 |
産業構造転換枠 | 最大7000万円 | 2/3 |
最低賃金枠 | 最大1500万円 | 3/4 |
物価高騰対策・ 回復再生応援枠 | 最大3000万円 | 2/3 |
サプライチェーン強靭化枠 | 最大5億円 | 1/2 |
補助金額は従業員数によって変化しますので従業員数が少ない企業の場合は最大金額を受け取ることはできません。また、補助率は中小企業なのか中堅企業なのか企業規模によっても変わります。上記表は中小企業の場合の補助率となっています。
補助対象経費
事業再構築補助金の補助対象経費は、建物費、機械装置・システム開発費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費の11項目となっています。
各項目の詳細は別記事でご紹介いたしますが、事業再構築補助金の特徴は「建物費」が入っているということが大きいと思われます。
他の補助金で建物費が入っているものはあまり多くはありません。
内装工事やそれに伴う、電気工事、水道工事、消防工事などを行うと多くの費用が発生してしまいます。新たな店舗や工場を構える際の費用が事業再構築補助金を使用することで大きく軽減されます。一番のメリットといえるかもしれません。
まとめ
事業再構築補助金とは社会環境の変化にあわせて自社のビジネスを変革していく際に使える補助金といえます。既存の事業を活かしつつ、またはリスク分散の為に既存の事業とは全く別の事業をスタートさせるときに建物費をはじめとする多額の経費を補助対象に加えることができるため、事業者にとっては非常に魅力的な補助金のひとつといえます。
その分申請の難易度も高くなっているもののチャレンジする価値のある補助金といえるでしょう。