事業再構築補助金の成長枠とは?わかりやすく解説します

事業再構築補助金は第1回から第9回まで「通常枠」とされていた枠が、2023年6月30日締め切りの第10回から「成長枠」になり、大きく要件が変更となりました。

この成長枠は第11回、そして第12回も同様の要件となるとみられています。

事業再構築補助金の中でも中心となる申請枠のひとつですのでわかりやすく解説していきます。

通常枠との違い

第9回までの通常枠と比べて変更となった点は大きく5点あります。

1,市場拡大要件の追加

市場拡大要件とは、新たに取り組む事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模(製造品出荷額、売上高等)が10%以上拡大する業種・業態(日本標準産業分類の小分類以下又はそれと同程度の粒度の業種・業態)に属している事を定めた要件になります。事前に事務局が指定した業種・業態以外でも応募時に要件を満たす業種・業態であることを証するデータを提出し認められた場合には対象となり得ます。

なお、10年間の計算時にはコロナによる特異的な状況を除外するため、原則コロナ前である2019年までの期間とするように指示が出ています。

※第10回公募要領より

公募要領に10%拡大についての細かい解説が載っています。これによると、10%という数字だけで判断するわけではなく、10年間トータルで見た時に上昇トレンドにあるかどうかを重視しています。

売上高減少要件の撤廃

売上高減少要件は第10回以降は「2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」とされています。

この売上高減少要件が成長枠では必要なくなっています。

第9回まではコロナの影響で業績が厳しくなっている企業のチャレンジを応援するという趣旨の補助金でしたが、第10回以降は日本の経済成長をひっぱる会社や事業を応援するという目的に変わっており、その為業績が好調だったり売上高が伸びている企業も対象となっています。

給与総額増加要件の追加

新たに追加された要件として「給与総額増加要件」があります。この要件は「補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度の給与支給総額を基準とし、補助事業終了後の3~5年の事業計画期間中、給与支給総額を年率平均で2%(賃上げ加点を受ける事業者は3~5%)以上増加させる計画を作成し、実行する」というものです。

これまでは給与に関する要件というのは通常枠には定められていませんでしたが、成長枠になるにあたり新たに給与支給総額の増加という要件が追加されています。あくまで総額なので新たに従業員を1~2人増員することで達成は容易かと思いますが忘れてはならない要件になります。

補助上限額の減少

通常枠と比較して補助上限額はわずかながら減少しています。次の表は第9回までの通常枠と第10回の成長枠の補助上限額をまとめた表になります。

通常枠(第9回まで)成長枠(第10回以降)
従業員20人以下100~2,000万円100~2,000万円
21人~50人100~4,000万円100~4,000万円
51人~100人100~6,000万円100~5,000万円
101人以上100~8,000万円100~7,000万円

補助率の減少

成長枠の補助率は中小企業者等が1/2。中堅企業等が1/3となっており、大規模な賃上げを行う場合はそれぞれ2/3、1/2と補助率が上昇するようになっています。

第9回までの通常枠は中小企業者等が2/3、中堅企業等が1/2となっており(一定金額を超えるとその金額を超えた部分のみ補助率は減少する)通常枠の時よりも補助率が減少しています。

事前着手届出ができなくなった

第9回までの通常枠であれば、事前着手届出を行う事で一定期間遡って補助対象経費に計上する事ができましたが、第10回からは成長枠は事前着手届出の対象から外れてしまいました。

成長枠の補助金額

上記通常枠との変更点でも書かせていただきましたが、成長枠の補助上限は企業が雇用している従業員数によって異なります。この時の従業員数は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とされる者」と解釈され、パートやアルバイトについては企業ごとに判断することになります。

成長枠の補助率

成長枠では中小企業者等と中堅企業等で補助率が変わります。また、大規模な賃上げを行うかどうかによっても補助率は変わります。

中小企業者等とは

中小企業者とは資本金又は従業員数が下記の数字以下となる会社又は個人の事とされています。

業種資本金従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業
並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

中堅企業等とは

中堅企業とは上記中小企業者等の資本金、従業員数どちらも超えている企業かつ、資本金の額又は出資の総額が10億円未満の法人のこととされています。(資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000人以下であること)

補助率引上げ要件とは

補助事業期間内に給与支給総額を年平均6%増加させること。

補助事業期間内に事業場内最低賃金を年学45円以上の水準で引き上げること。

上記2点の要件をクリアする計画を立て実行することで補助上限が大きくなります。

中小企業者等1/2(大規模な賃上げを行う場合は2/3)
中堅企業等1/3(大規模な賃上げを行う場合は1/2)

成長枠のその他の要件

通常枠の比較でもお伝えした「市場拡大要件」「給与総額増加要件」それに加えて「付加価値額要件」があります。付加価値額要件も通常枠の時よりも増加比率が高まっているので注意が必要です。

市場拡大要件

取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している事を定めた要件

給与総額増加要件

事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることを定めた要件

付加価値額要件

補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加、又は従業員1人あたり付加価値額の年率平均4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することを定めた要件

まとめ

事業再構築補助金の成長枠は売上高減少要件が無い為、売上が拡大している企業であっても申請ができるようになっています。その代わりに新たに取り組む事業が10年間で市場規模が拡大している根拠となる資料を提出するなど成長産業に属している事を証明しなければならない(既に事務局が認めている業種以外の場合)等、別の大変さもあります。

人件費の要件や補助率の減少など懸念点はあるものの、売上が拡大している企業で、投資額が大きい場合などは1/2の補助でもかなり事業の助けになってくれるので検討してみるとよいでしょう。

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三島友紀
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