事業再構築補助金の産業構造転換枠についてわかりやすく解説します。

事業再構築補助金の産業構造転換枠も第10回から、国内市場の縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業者を支援する枠として新設されました。

成長枠とはまた違う考えから生まれたこの枠。どのような枠なのでしょうかわかりやすく解説していきます。

産業構造転換枠とは

産業構造転換枠とは簡単にいえば、「今現在の業種・業態」の市場が縮小していて、今後の発展が見込めない業種・業態の事業者が別の業種・業態に事業転換、業種転換等をすることで今後も事業の持続的な成長の機会を得るチャレンジを応援する枠になります

申請するには「今現在の業種・業態」の市場が縮小していることを事業計画書等で述べないといけません。

産業構造転換枠の要件

産業構造転換枠の申請の為には、現在の主たる事業が過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること、または地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の 10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の 10%以上を占めること【市場縮小要件】を要件として定めています。

なお、成長枠と同様に10年間の計算時にはコロナによる特異的な状況を除外するため、原則コロナ前である2019年までの期間とするように指示が出ています。

※第10回公募要領より

公募要領には10%縮小についての細かい解説が載っています。これによると、10%という数字だけで判断するわけではなく、10年間トータルで見た時に下降トレンドにあるかどうかを重視しています。

地域における基幹大企業が撤退とは?

産業構造転換枠では自社の事業が市場縮小している場合だけでなく、地域において基幹大企業が撤退し、その結果当該市町村内の10%以上が失われると見込まれる地域で営業をしており、かつ、当該機関大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占める事業者も申請できる事となっています。

属している市場は縮小市場ではないが、地域的に基幹大企業の撤退という特殊事情により事業が難しくなった方が申請できます。

この機関大企業が撤退した地域というのは事業者が勝手に設定できるものではなく、あらかじめ事務局が定めた地域になります。その地域で事業を営んでいる方以外は使えません。

第10回公募用の産業構造転換枠対象地域リスト

産業構造転換枠の補助金額

産業構造転換枠の補助金額は成長枠と同じ額となります。また補助上限は企業が雇用している従業員数によって異なります。この時の従業員数は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とされる者」と解釈され、パートやアルバイトについては企業ごとに判断することになります。

なお、産業構造転換枠のみ「既存事業の廃業」を行う場合には「廃業費」を2,000万円上乗せできるというルールがあります。

産業構造転換枠の補助率

産業構造転換枠の補助率は成長枠よりも高くなっています。おそらく縮小市場にいる事業者をより重要視して支援したいという意図ではないかと思います。

中小企業者等2/3     
中堅企業等1/2

産業構造転換枠のその他の要件

「市場縮小要件」以外にも「付加価値額要件」があります。付加価値額要件は成長枠よりは増加比率は少なくてもOKです。

付加価値額要件

補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員1人あたり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することを定めた要件

廃業費を申請できる

産業構造転換枠では他の枠と異なり、補助対象経費が増えます。それが「廃業費」になります。

廃業費を申請する為には産業構造転換枠で申請をし、「既存事業の廃止」を事業計画に入れる必要があります。既存事業の縮小では×で、今後一切行わない完全なる廃止が必要です。いくつかの事業を営んでいる事業者であればそのうちの1つ以上を今後一切行わないことを指します。

例えば飲食店で3店舗営んでいる事業者が1店舗だけを閉店するようなケースは廃業費は申請できません。

廃業費には①既存事業の廃止に必要な行政手続きを司法書士、行政書士等に依頼する為の経費や、②事務所や店舗の解体費、③事務所や店舗を賃借していた場合の原状回復費、④機械設備等をリースしていた場合の途中解約に伴う解約金や違約金、⑤機械設備等の移転、移設費用が該当します。

廃業費の上限は主たる補助対象経費総額の1/2又は2,000万円の小さい額となります。

まとめ

産業構造転換枠は既存事業が市場縮小傾向にあり将来的な企業の持続的発展が厳しい事業者に対しての枠となります。全体的に成長枠よりも優遇されており申請できるのであればチャレンジしてみたい枠です。

既存事業が市場縮小傾向にあるかどうかについては統計局や経済白書などのデータを参考にしながら調べていきましょう。

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三島友紀
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