事業再構築補助金の卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠についてわかりやすく解説します

事業再構築補助金には成長枠とグリーン成長枠への上乗せ枠として「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」が設定されています。どのような特徴があるのでしょうか?わかりやすく解説いたします。

成長枠、グリーン成長枠への申請が大前提

卒業促進枠も大規模賃金引上促進枠も上乗せ枠になります。そのため、成長枠又はグリーン成長枠に申請することが大前提の要件となります。

成長枠又はグリーン成長枠への申請と「同時に」申請をする必要がある為、成長枠への申請後に追加で申請したり、採択受けた後に追加することはできません。

また上乗せできるのは卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠のどちらかひとつとなり、両方を追加申請することはできません。

さらに交付決定を受けた後に、何らかの事情で成長枠又はグリーン成長枠が採択の取消しや交付決定取消し、実施困難な状況になった場合は同時に卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠も取消しとなります。

卒業促進枠の上乗せのイメージ

卒業促進枠を成長枠又はグリーン成長枠と同時に申請すると、成長枠、グリーン成長枠の補助金上限と同額が追加申請できるようになります。

ただし、卒業促進枠の補助対象経費は成長枠又はグリーン成長枠の補助対象経費と明確に分ける必要があります。例えば同一の建物や設備等を卒用促進枠と成長枠又はグリーン成長枠との両方で対象経費とすることはできません。

なお、補助率は成長枠・グリーン成長枠と同様で、中小企業者等は1/2。中堅企業等は1/3となります。

卒業促進枠の要件とは

卒業促進枠の要件は「成長枠又はグリーン成長枠の補助事業終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること(卒業要件)」ただひとつになります。

もう少し詳しく解説すると、応募申請時にどの程度の法人規模かによって、最終的に成長する必要のある法人規模かが決められています。

応募申請時で中小企業(みなし中堅企業を含む)の場合
→特定事業者、中堅企業又は大企業に成長

応募申請時で特定事業者の場合
→中堅企業又は大企業に成長

応募申請時で中堅企業の場合
→大企業に成長

といった具合です。

事業再構築補助金を申請する企業の多くが中小企業ですので、一番有り得そうな中小企業から中堅企業に成長するケースを考えてみます。

中小企業が中堅企業になるということ

中小企業の定義は以下の表をご覧下さい。

事業再構築補助金第10回公募要領より

資本金、従業員数がどちらもこの数字の範囲内に属している場合は「中小企業」となります。反対にこの数字をどちらも超えてしまうと中堅企業となります。

(なお、あまりないとは思いますが、資本金が10億円を超え、従業員数が2,000人を超えると中堅企業を超え大企業となります)

つまり「卒業促進枠」を上乗せで申請する場合は、上記の表の数値を補助事業終了後3~5年で超えることを事業計画書で示しておく必要があるということです。

大規模賃金引上促進枠のイメージ

大規模賃金引上促進枠も成長枠又はグリーン成長枠と同時に申請すると、成長枠、グリーン成長枠の補助金上限に加算されるかたちで上限額が引上げとなります。

卒業促進枠との違いは卒業促進枠は、主となる成長枠・グリーン成長枠と同額の上限が引上げとなるのに対し、大規模賃金引上促進枠は上限が3,000万円と固定されていることが違う点といえます。

そのため、従業員20名以下の企業にとっては卒業促進枠よりも補助上限が高くなるといえます。

なお、補助率は成長枠・グリーン成長枠と同様で、中小企業者等は1/2。中堅企業等は1/3となります。

また、補助対象経費は成長枠又はグリーン成長枠の補助対象経費と明確に分ける必要があるのは卒業促進枠と同様です。

大規模賃金引上促進枠の要件とは

大規模賃金引上促進枠の要件は「成長枠又はグリーン成長枠の補助事業終了後3~5年の間、事業場内最低賃金を年額 45 円以上の水準で引上げること(賃金引上要件)」と「成長枠又はグリーン成長枠の補助事業終了後3~5年の間、従業員数を年率平均 1.5%以上増員させること(従業員増員要件)」の2点になります。

この2点の要件は成長枠に設定されている大規模な賃上げを行う場合の補助率アップの特典とは異なる内容になっています。詳しくみてみましょう。

賃金引上要件

賃金引上要件は年額45円以上の水準で引き上げることとあります。つまり3~5年の期間内で3年であれば135円。5年であれば225円引き上げることを定めています。

一見厳しそうに見えますが、2023年7月28日に今年度の地域別最低賃金を全国平均で41円引き上げるというニュースが出ました。(リンク先はNHKニュース)

平成29年平成30年令和元年令和2年令和3年令和4年
東京の地域別最低賃金958円985円1013円1013円1041円1072円

上記表は平成29年以降の東京都の地域別最低賃金の推移です。平成29年からの5年間で114円上昇しています。年額平均すると」22.8円です。

昨今の物価上昇もあり、今後の最低賃金の増加幅はこれまでよりも上昇すると言われています。つまり、賃金引上要件の年額45円以上の半分から2/3程度はそもそも従業員を雇用している限りやらなければいけない給与アップといえます。

もちろん負担はあるでしょうが、毎年45円アップという文面よりは安心できるのではないでしょうか?

なお、基準となる事業場内最低賃金は補助事業終了時点の事業年度の決算月か、申請時点の事業場内最低賃金のどちらか高いほうになります。

従業員増員要件

従業員増員要件は年率平均1.5%以上の増加とあります。

従業員が10人の会社であれば、単純計算すると、5年の事業計画期間で1.5%×5=7.5%となり、10人×7.5%増=10.75人⇒切り上げて11人となり、1人増加すれば達成しそうに見えます。

ただし、最低でも事業計画期間で1人以上の増員を行う必要があるという注意書きがあるため、

上記の会社であれば、
3年なら3人の増員を
5年なら5人の増員をする必要があります。

増員の基準となる従業員数は、補助事業終了年度の決算月の常勤従業員数又は、申請時点の常勤従業員数のどちらか高いほうとなります。

常勤従業員数とは、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」を言います。

まとめ

卒業促進枠も大規模賃金引上促進枠も上手に使えばより多額な資金を必要とする補助事業に挑戦することも可能となります。

特に大規模賃金引上促進枠は該当する事業者も多いと思いますので、よりしっかりとした経営計画を検討していただきチャレンジしていただければと思います。

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三島友紀
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行政書士/ファイナンシャル・プランナー

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